カップルごちゃごちゃ、基本はヒバツナ!
1. 突発妄想
「ひば、ひばりさ」
その大きな眼に涙をたたえて、綱吉は目の前の恋人に手を伸ばした。雲雀はその手を、そ、とにぎった。
「うん、大丈夫かい、綱吉?」
「―――!」
言葉が出てこずに、こくこくとうなづく。ぽたり、と涙が床に落ちる。がくり、と膝が落ちるのを、雲雀はあわてて支えた。
「綱吉・・・・・・?」
「も、会えないと、おもっ・・・・・・なんにも、言わないから、すご、ふあんで」
「言ったら、君は止めただろう?」
「当り前じゃないですか!」
き、と雲雀をにらむ。
「雲雀さん一人だけそんな、そんな危ないこと、やです!やっ・・・・・・!」
頭を振って、泣く、10年前の幼い恋人に、雲雀は困ったように微笑んだ。
「でも、僕は、こうしてまた、君のところに現れただろう?君の前に、きただろう?」
綱吉は、こくり、と頷くと、雲雀のその胸の中に飛び込んで、背中を思い切り抱きしめた。
「おかえりなさい・・・・・・!」
「・・・・・・ん、ただいま」
2. 続かない山獄
( 獄寺っ……!! )
山本は床にがっくりと手をついてうなだれた。なんだこのかわいい子。
のろのろと顔を上げれば、自分のベッドで枕に顔を埋め、すぴすぴと眠る恋人がいる。その寝顔は幼く、年相応にあどけない。
「――あー……」
これは、いただいてしまっていいってことか?
3. だって君、本当にかわいいんだもの!
雲雀恭弥はうきうき、と恋人の姿を上から下まで眺め回した。
「うん、かわいい。他のどんな女子よりも可愛いよ」
「雲雀さん‥‥‥それちっともうれしくない‥‥‥」
セーラー服のスカートをひっぱって、なるべくながくながく、しようとしている。上から羽織ったアイボリーのカーディガンはながく、その指はちょこん、とみえているだけ。
お揃いの格好にご満悦、な女王様は、にまり、とした。
「本当に君、性別間違えて生まれてきたよね」
「ほっとけ!」
涙目な彼にちゅ、とキスをした。
4. 38度より熱いてのひら
傾ぐ視界のなか、駆け寄るあの子の姿、
「雲雀さん!」
そして、ブラックアウト。
倒れこむ少女の華奢な体を綱吉は己で支える。耳元では、は、と荒い息が聞こえてあせる。覗き込めば顔色は青くて、あきらかに体調は最悪そうだ。
「委員長!?」
「あ、草壁さん」
「沢田、委員長は……」
「わからないです。取り敢えず保健室に運ばなきゃ」
綱吉は雲雀の体を横抱きにして歩きだす。草壁はそれをぽかん、とただ見送った。そしてそれは彼だけでなく。
「ダメ、ツナ?だよな?」
目撃してしまった生徒達はそろって顔を見合わせた。
だって、なんだか、雲雀恭弥が、ただの女の子にみえたんだ。
そろり、そろりと髪を撫でる暖かな手に雲雀はゆるゆると意識を覚醒させた。
思わずその手をつかむと、びくっと反応する。
「あれ、なんだ綱吉か」
「なんだ、じゃありませんよまったく。心臓にわるいなあ」
いきなりはやめてくださいって。
ぶつぶつ言う綱吉を尻目にむくり、と起き上がる。頭がガンガンとして、くらり、とめまい。
「あああ、寝てなきゃダメですよ。熱が38度もあるんですから」
「大丈夫だよ、それくらい」
「だ・め・で・す!おとなしく寝てる!」
むう、と頬を膨らませる。しかしどこかうれしそうだ。
「……ね、いっしょにいてくれる?」
「かまいませんよ?」
「じゃ、手ぇ繋いでて」
「っ……」
かああ、と頬を染めて手を差し出す。その手をそっと引き寄せると、雲雀はすり寄った。熱を帯びた雲雀の頬。でも、なぜだろう。熱く感じない。
「……綱吉、真っ赤」
くすりと響く笑い声に綱吉はますます顔を赤くした。
5. 前後は考えてない
い、 た
「雲雀さん!」
ホームの向かい側、携帯電話の画面を見つめて、雲雀恭弥が立っていた。ふ、と眉をあげ、顔をあげて、
ゴオオオオオ
上り電車に視界を遮られた。たくさんの人が乗り降りする電車は、向こう側のホームなんてみせてくれない。そのうち、下りも入ってきて、完璧に見えなくなる。やがて、2本の電車はホームを出ていき、向こう側には、誰もいなくなっていた。
ぐらり、と崩れ落ちそうになりたたらを踏む。微かな嗚咽が喉からこぼれた。
なくな、なくな、なくな。
泣いて、どうする!
今まで、すれ違っていたのは全部俺のせいで、避け始めたのは俺、会いたくて探したのも俺、自分の身勝手で、泣くな、よ、俺!
「ごめんなさい、ごめんなさい、雲雀さん、ごめんなさい。ごめんなさ……」
「なにに、あやまってるの?」
後ろからふわりと抱き寄せられる。
「ねえ、つなよし、きみは、」
雲雀さんに最後まで言わせずに、俺は彼に抱きついた。
「な、に、どうしたの」
「うそです、うそなんです、他に好きな人なんていません。ごめんなさい、俺雲雀さんにうそついた、傷つけた、ごめんなさい、ごめんなさい」
雲雀さんは、はあ、とため息を吐いたあと、俺を思い切り抱き締めかえした。
「う、わ」
「それくらい、わかってるよ。きみは、そんなに器用じゃないだろう。あのときだって、あんな顔をして、僕がわからないとでも思ったの。僕は、君の表面だけを見てきたわけじゃないんだよ」
6. 銃声が天に響いて
はあ、とため息を吐かれた。
「馬鹿だろう、君」
「…でしょうねぇ」
こと、あなたに関しては、とは言わないでおく。どうせ、ここまで頭がおかしかったのか、と思われるだけだから。
悠長にタバコをくわえたら嫌な顔をされた。まあ、この人タバコ嫌いだし。ジッポーで火を点ける。深く吸い込んで吐き出した。
「僕のことなんて放っておけばよかったんだよ、サワダツナヨシ」
「まあ、愛のせいですよ」
「ほんと馬鹿」
「ありがとうございます」
「誉めてないんだけど」
はは、と横隔膜をふるわせると、銃瘡が引きつれた。いたい、ていうレベルじゃない。
「っ、つぅ‥‥‥」
「‥‥‥やっぱり馬鹿だ」
苦虫をかみつぶしたような顔をして、まるであなたが怪我したみたいだ。
「医療班は呼んでおいた。おとなしくしてなよ」
「‥‥‥」
「ちょっと、なんで黙るの」
「えへへへへ、あ、雲雀さんがキスしてくれたらおとなしく‥‥‥」
「‥‥‥沢田?」
「ごめんなさい冗談です冗だ」
ん?
柔い感触、煙草はいつのまにか取り上げられていて、白い目蓋が見える。黒髪、す、と離れていく、彼は渋い顔をしていた。
「‥‥‥だから煙草なんて嫌いなんだ。にがい」
「ひばり、さ?」
「これでおとなしくしてるんだろう」
こくり、頷くと、彼はコートを翻した。
「残り、もらっていくよ」
呆然とするしかないまま仰向けに空を見上げて、煙草を取り出そうと探った。なかった。さっきのが、最後の一本だったらしい。手を放り出して、目を瞑った。
最後の煙草は、どこかへ行ってしまった。
7. メロディエンドは空回りする
「ひばりさんのばーか」
唐突につぶやかれた一言に、黒川はぎょっとした。
「ちょ、沢田、あんたなにいってんのよ」
「ホントのこと」
ぶすり、と拗ねたような顔をして、不機嫌そうな声色を出す。慌ててきょろきょろと辺りを見回し、風紀委員が誰もいないのを確認し、ほっと息を吐く。それから、恨めしそうに、綱吉を睨んだ。
「ちょっとあんた、めったなこというんじゃないわよ。あんたが制裁を受けるのは勝手だけれどね、あたしまでとばっちりがきたらどうするの」
「でも、本当だもん」
黒川は、額に手をあてて、諦めたようなため息を吐いた。
「あんた……まったく、いつもは度胸なんてこれっぽっちもないくせに、妙なところで……」
「だって‥‥‥」
鼻声にぎょっとして、綱吉をみる。なんてこと。
「ちょ、何で泣くのよ!」
「雲雀さんのばかぁー!」
「ああ、もうまったく!」
ティッシュをとりだし鼻に当ててやる。綱吉は当てられたティッシュを掴むとうう、とうなった。
「俺の気持ちなんて考えないで、いっつも一方的で、信用してくれなくて、子供扱いで、いきなりキスするし、エロいし、かっこいいし美人だし大好きだばかー!」
「へぇ、そんなふうに思ってたの」
ピキッ
後ろから、低い声が聞こえてくる。少し、笑ってるみたいに震えて。
綱吉はぎりぎり、と後ろを振り向いた。
「ひ、ひ、ばりさ」
「さあ、応接室にいこうか」
「いやああああああああ!!」
綱吉が連れ去られたあと。残された黒川とクラスメイトたち。
ぼんやりと事態の把握に努める黒川は、こて、と首を傾げた。
いきなりあらわれた風紀委員長も、連れ去られた友人もとりあえず脇においておいて。
つまりは。
「痴話喧嘩?」
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