チョコよりもあなたが大事
「ねえ、沢田か忠犬いる?こっちにいるって聞いたんだけど」
地下一階、調理室前。なぜか中には入らずその前で壁に寄りかかっていた山本に雲雀は声を掛けた。山本はよ、とかるく片手を挙げて挨拶する。
「獄寺なら、ほら」
山本が指差した先には調理室の扉のガラス窓にべったりと顔をつけ中を窺っている獄寺がいた。
「……なにやってるの、アレ」
こっちは仕事なんだけど、と手に持った紙の束をひらひらと振ってみせる。おそらく内容は先日の抗争の後始末に関する報告書。これを獄寺経由で沢田に、もしくは直接沢田に渡してサインをもらわないと終われない。慣れないであろうデスクワークに苛々している雲雀に山本は苦笑した。
「なんかな、ツナがチョコレートを作りたいんだと」
バレンタインがもうすぐだろ?といいかけた山本は雲雀の顔色がざっと蒼くなったのを見た。
「雲雀?」
「……中にいるの、あの子?あの子が、作ってるの!?」
「おう、そうだけど」
山本が肯定すると雲雀は手に持っていた報告書を山本に押し付け、扉の前に陣取っていた獄寺を押しのけ中に入る(獄寺は思いっきり頭を床に打ち付け悶絶した)。
「綱吉!?」
「わっ!雲雀さん!どうしてここに?」
その問いには答えず雲雀はずいっと手を出した。
「見せて」
「……」
「手、見せる」
ほら、と促され、渋々沢田は手を出した。
「〜〜〜〜〜〜やっぱり……!!」
そこには見事に傷だらけの指。雲雀はその手をとるとため息をついた。
「前にも言ったろう。君は人一倍不器用なんだからこういうことはしちゃだめ。こんなことは雇ってる料理人にでもさせなよ」
「……だって」
「だってじゃない。君の気持ちはすごい嬉しいけどね、君が傷つくくらいだったらいらない」
悲しそうな目でじっと傷だらけの手を見る雲雀に沢田は少し顔を赤らめて「はい」といった。
「というかなんでチョコ作りで包丁?」
「あ、刻むのに」
「薄い板チョコならビニール袋に入れて木槌で割るとか」
「ああ、その手が!」
今思いついた、というように目を見開く沢田に呆れ、それからその傷だらけの手を持ち上げそっと唇で触れた。沢田は目を丸くするが甘んじて享受する。むしろ嬉しそうだ。
それを見てキレたのは獄寺で。
「雲雀いいいいい!てめえ十代目の御手に何してやがる!離れろ、今すぐ離れろおおおお!!」
「ご、獄寺君!?」
何でいるのといわんばかりの沢田の声。しかし獄寺は気づかない。後ろから山本が「わりいな」と顔を出した。雲雀はいぶかしげな顔をする。
「……なに、これ、何も知らないの?」
獄寺を見てそういう雲雀に沢田と山本は目線を獄寺から逸らした。
「いやあ、しらねーっていうか」
「い、言えなかったって言うか……」
「……なんで言わないかな、面倒くさい」
そういうと雲雀はぐい、と沢田を引き寄せてその腕の中に収めた。
「なっ!」
「この子は、僕のだから」
蜂蜜色のふわふわの髪に顔を埋め、そこから獄寺を見やる。沢田は顔を赤くすることはすれど、抵抗せずに収まっている。その様子に獄寺はわかりやすく衝撃を受け、膝をついて落ち込んだ。
「じゅ、十代目のチョコレートッ……」
山本はそんな獄寺を見て他には聞こえないようポツリ。
「……いや、結婚してんのに不毛じゃねえか?」
それでもハルならば沢田のチョコを喜ぶであろうあたり、なんだかなあ、とおもう。
あとがき
獄寺君は不憫なキャラだと思う。というか、ゴクハルがツナを大好きだといい。一緒になってツナのすばらしいところを語り合ってる夫婦だといい。それから、最初から顆粒になってるタイプのチョコ使えばいいじゃん綱吉。そういうタブレットタイプの製菓用チョコあるよね綱吉。
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