ずてんっべちゃっ
「……」
書類整理真っ最中。カリカリとペンを走らせていた雲雀は、扉の外から聞こえてきた音に一瞬だけ動きを止め、また何でもないように再開した。今日中にここに積まれた分を終わらせてしまうつもりなのだ。無駄なことに使う時間はない。
……ぐすっ。ふえ……
「…………」
かすかに泣き声が聞こえてくる。……気にしてはいけない。それよりも目の前の書類に集中しなければ。そうでなければ、ここ数日、取り締まりを部下たちに任せて書類仕事をしていた意味がないのだ。幸い残りもわずかとなっている。先が見えているというのはまったくもってすばらしいことだ。
ううっ……痛いよぅ……
「…………っ」
心の中で耳をふさぐようにしてペンの速度を速める。一度引っかけて小さく穴を開けてしまったが、これくらいならたぶん、許容範囲内だ。そう、集中すれば外の音だって聞こえない。今だって、本当なら運動部の声が聞こえてきたっていいが、全く聞こえない。そう、集中すればいい。集中。ほら、諺にもあるではないか。心頭滅却すれば火もまた涼し……!
……ひばり、さん
「〜〜〜〜〜っ!!」
ガラ、と扉を開ければ案の定そこには自身の小さな恋人がいた。雲雀は真っ赤な顔で―――ああ、顔が赤いのなんか自覚してるさ!!―――綱吉を応接室に引っ張り込んで、ぴしゃん!と扉を閉めた。
「ああもう、なんなの!もう!どこぶつけたの!」
「ひざ……」
「ほらみせて!」
かわいらしいピンクのふりふりなスカートからのびた膝は、すりむけてこそいないがうっすらと青あざになっている。雲雀は大袈裟かとも思ったが、湿布を出してきてはってやった。
「……で、どうしたの。しばらく、僕が行くまでおとなしくしててねって言ったよね」
綱吉はぐずっとはなをすすると、とぎれとぎれに話し始めた。
「だって、雲雀さん、きょう、お誕生日でしょ?」
「……うん、まあ」
そう、今日は雲雀の誕生日だった。本当だったら昨日までで終わっているはずだったのだ、仕事だって。しかし予想以上に多かった書類は、当日まで圧迫してくれやがった。せっかく、二人で過ごそうと思っていたのに。
「待っててって、言われたけど、でも、おめでとうくらい、あの、プレゼントはちゃんと、用意してたけど、でも、早くおめでとうって言いたくて」
「……うん」
「いつもなら、取り締まりしてると思ったから、さがしたけど、いなくって、くさかべさんが、応接室だって」
「……」
「おれ、おれ、おめでとうって、ひばりさっ、いいたかった、さびしかっ……」
「……ごめん、もういい、わかったから」
わあわあと泣き出してしまった綱吉を抱きしめて、雲雀は思った。僕の馬鹿野郎。
ぎゅうぎゅうと暖かい体温を抱きしめて、ごめん、とつぶやいているうちに、少しずつ落ち着いてきたのか泣き声が小さくなっていった。
「ごめんね?綱吉。放っておいたりして」
「う……」
えぐえぐと泣きじゃくる綱吉の背中をさすってやりながら、雲雀は耳元に唇を寄せた。
「僕もね、君とすごしたくて、仕事、片付けてたんだ」
「ふ……?」
「もう、残りもちょっとだし、たぶん、明後日に回しても大丈夫だから。だから、今日と、明日の朝まで、一緒にいようか」
「……ほんとう?ひばりさん」
「本当」
肯定してやると、綱吉はまだ涙の残る顔で、にこ、と笑った。それを見て雲雀は、もう一度僕の馬鹿野郎、と思った。
はっぴーばーすでーひばりさん!つなよしに精一杯祝われてればいいさ!
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